戦時中、実際の暮らしってどうだったんだろう
リアルな日常を描いた日記から生活を知る
公式の記録やドキュメンタリーだけでは伝わってこない、市井の人の戦時中の生活を描いている。作家・山田風太郎が医学生だった頃を振り返った作品。山田風太郎は幻想的な作品でのちに大作家となるが、この日記は実にリアリティーをもって描かれている。だからこそ若者の勝手な独り言として読み進めているうちに、その時代の雰囲気を手に取るように理解することができ、戦時下の国民の実感がどういうものだったのか、一言では片付けられない多様な生活が存在したということが伝わってくる。強烈だったのは、銭湯のお湯が汚い場面。「え?」と読者に思わせてから、その理由がきちんと描かれている見せ方が読者にとって入り込みやすく、素晴らしい構成になっている。人とは存外しぶといもので、どんなに恐ろしい情勢になったとしても大抵のものにはすぐに慣れてしまう。たくましいとも言えるし、鈍いとも言える。国がどうなるのかわからないという状況でも、生活をしていればお隣さんの問題が一番だったりする。そのような戦時中のリアルな日常を描いた作品だ。
推薦コメント
公式の記録やドキュメンタリーだけでは伝わってこない、市井の人の戦時中の生活を描いている。作家・山田風太郎が医学生だった頃を振り返った作品。山田風太郎は幻想的な作品でのちに大作家となるが、この日記は実にリアリティーをもって描かれている。だからこそ若者の勝手な独り言として読み進めているうちに、その時代の雰囲気を手に取るように理解することができ、戦時下の国民の実感がどういうものだったのか、一言では片付けられない多様な生活が存在したということが伝わってくる。強烈だったのは、銭湯のお湯が汚い場面。「え?」と読者に思わせてから、その理由がきちんと描かれている見せ方が読者にとって入り込みやすく、素晴らしい構成になっている。人とは存外しぶといもので、どんなに恐ろしい情勢になったとしても大抵のものにはすぐに慣れてしまう。たくましいとも言えるし、鈍いとも言える。国がどうなるのかわからないという状況でも、生活をしていればお隣さんの問題が一番だったりする。そのような戦時中のリアルな日常を描いた作品だ。
里中 満智子(マンガ家 / マンガジャパン代表)