第一次世界大戦とはどんな戦争だったのか
人間性を奪われた名もなき兵士たちの泥沼の塹壕戦を描く
戦争というと、日本では第二次世界大戦を思い浮かべがちだが、フランスでは未曽有の犠牲者を出した最初の大戦争である第一次世界大戦のイメージが強い。第一次世界大戦といえば、敵国同士が長大な塹壕を掘り、そこで泥沼の争いを繰り広げた塹壕戦で知られる。本書はその第一次世界大戦の塹壕戦のさまざまな局面を描いたスケッチとでもいうべき短編集である。主人公は名もなき一介の兵士たち。彼らは、怒号が飛び交い、死体が散乱し、ネズミが這い回る不潔な環境に身を置き、手榴弾や毒ガス、さらには壊疽の危険に身を晒しながら、その日その日を生き延び、戦場の不条理の中で、人間性を剥奪され、無感動になっていく。死ぬ間際に人間らしさを取り戻すこともあるが、皮肉なことにそれを取り戻した瞬間に、彼らは死ななければならない。日本ではあまり話題にならない第一次世界大戦の塹壕戦の悲惨さを、冷徹な筆致であますところなく伝える静かな傑作。
推薦コメント
戦争というと、日本では第二次世界大戦を思い浮かべがちだが、フランスでは未曽有の犠牲者を出した最初の大戦争である第一次世界大戦のイメージが強い。第一次世界大戦といえば、敵国同士が長大な塹壕を掘り、そこで泥沼の争いを繰り広げた塹壕戦で知られる。本書はその第一次世界大戦の塹壕戦のさまざまな局面を描いたスケッチとでもいうべき短編集である。主人公は名もなき一介の兵士たち。彼らは、怒号が飛び交い、死体が散乱し、ネズミが這い回る不潔な環境に身を置き、手榴弾や毒ガス、さらには壊疽の危険に身を晒しながら、その日その日を生き延び、戦場の不条理の中で、人間性を剥奪され、無感動になっていく。死ぬ間際に人間らしさを取り戻すこともあるが、皮肉なことにそれを取り戻した瞬間に、彼らは死ななければならない。日本ではあまり話題にならない第一次世界大戦の塹壕戦の悲惨さを、冷徹な筆致であますところなく伝える静かな傑作。
原 正人(翻訳家)