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草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー くさ

小学生からOK
著者
キム・ジェンドリ・グムスク(著),都築寿美枝/李昤京(訳)
出版社
ころから株式会社
発刊状況
完結

戦前戦後を生き抜いたある韓国人女性の一生

日本軍「慰安婦」の問題を考える入口となる女性作家によるグラフィックノベル

推薦コメント

本書は日本軍「慰安婦」であったことを公表し、さまざまな活動を行ってきた李玉善(イ・オクソン)の伝記。物語は大きく3つのパートに分かれていて、李玉善の少女時代、「慰安婦」体験、戦後から現在にいたるまでの苦難の道のりを描く。伝記とはいえ、作者が無色透明になって、客観的な真実を伝えるとうそぶく作品ではない。作中には作者自身も登場し、第二次世界大戦を知らない若い韓国人女性の立場から、李玉善に共感し、同情する一方で、時には疑問を発したり、とまどいを表明したりもする。決して日本の戦争責任を一方的に糾弾する作品ではないことは強調しておきたい。むしろ、戦前戦後を生き抜いたひとりの女性の、それこそタイトルにもなっている「草」を思わせる、しぶとく力強く美しい人生に対する讃歌である。2000年代以降、欧米では女性作家のグラフィックノベルにおける活躍が著しいが、本書はその潮流に連なるアジア発の新しい世界的傑作である。

原 正人(翻訳家)

  • 発刊状況は2020年10月1日時点のものとなります。

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