「音」が聞こえてくるマンガ
ピアノの音だけでなく人の息づかいまで伝わる人間ドラマ
「音楽マンガ」の名作はいくつかある。それらの作品からは「音」が聞こえてくる。マンガはほぼあらゆる事を表現出来るが、「音」と「時間のコントロール」は読者の感性に委ねるしかない。「時間のコントロール」とは、映画であれば「この静止画面は何秒」とか、「ここの流れはゆったりと」など、作る側の意図にあわせて調整する。しかしマンガは「読者が自分の好きなスピードで読む」から「この画面は暫くじっと眺めて欲しい」とか「一コマずつゆっくりと味わって欲しい」という作者の意図がどこまで通じるかは読者まかせでしかない。「音」もそうだ。読者がどのような音を感じて読むか、読者 1 人ひとりの自由だ。だからこそ「音楽マンガ」は難しいし楽しい。「ピアノの森」は、楽器の音そのものだけでなく、主人公のカイを含め、あらゆる登場人物のモノローグの息づかいや声音までが伝わってくる。それは全ての登場人物の心を「こう描きたい、こう伝えたい」という作者の熱意と努力のなみなみならぬ大きさが実を結んだのだ。この作品は見事な音楽マンガであると同時に、人の心の動きと、人間同士の理解がもたらす幸福感に満ちている人間ドラマだ。
推薦コメント
「音楽マンガ」の名作はいくつかある。それらの作品からは「音」が聞こえてくる。マンガはほぼあらゆる事を表現出来るが、「音」と「時間のコントロール」は読者の感性に委ねるしかない。「時間のコントロール」とは、映画であれば「この静止画面は何秒」とか、「ここの流れはゆったりと」など、作る側の意図にあわせて調整する。しかしマンガは「読者が自分の好きなスピードで読む」から「この画面は暫くじっと眺めて欲しい」とか「一コマずつゆっくりと味わって欲しい」という作者の意図がどこまで通じるかは読者まかせでしかない。「音」もそうだ。読者がどのような音を感じて読むか、読者 1 人ひとりの自由だ。だからこそ「音楽マンガ」は難しいし楽しい。「ピアノの森」は、楽器の音そのものだけでなく、主人公のカイを含め、あらゆる登場人物のモノローグの息づかいや声音までが伝わってくる。それは全ての登場人物の心を「こう描きたい、こう伝えたい」という作者の熱意と努力のなみなみならぬ大きさが実を結んだのだ。この作品は見事な音楽マンガであると同時に、人の心の動きと、人間同士の理解がもたらす幸福感に満ちている人間ドラマだ。
里中 満智子(マンガ家 / マンガジャパン代表)