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2生命と世界

Ⓒ 村上竹尾 / 双葉社
死んで生き返りましたれぽ しんでいきかえりましたれぽ
小学生から OK
- 著者
- 村上 竹尾
- 出版社
- 講談社
- 発刊状況
- 完結
生きることの底の底にある感覚
生死の境を彷徨い、「生き返った」作者による体験ルポ
- ※発刊状況は 2020 年 10 月 1 日時点のものとなります。
- ※小学生から OK はあくまで委員会の判断による目安となります。
推薦コメント
不摂生からトイレの中で突然倒れ、生死の境をさまよって、文字通り「死んだ」=心肺停止状態から持ち直した男性(=作者)。しかし意識は戻っても身体は動かせず、知覚も戻らず、脳浮腫による意識の混乱と実に奇妙な知覚の状態から、長い時間をかけて徐々に回復していった生命と知覚の記録。人の顔から眼や口が逃げ出す。四角いものならば大きさにかかわらず同じに見える。たとえば、アイフォンと冷蔵庫が同じに見えるといった症状。また、文字も読めず、話されている言葉も理解できない状態なのに、それが温かい言葉か冷たい言葉かだけは、ふだんの数十倍ダイレクトに伝わってくる、というのも興味深い。人間が「生きる」ということの底の底にある感覚を深く考えさせてくれる本。と同時に、この知覚の表現はマンガでなければできない、と思わせられる。
藤本 由香里(明治大学 国際日本学部教授)
藤本 由香里
Yukari Fujimoto
明治大学 国際日本学部教授
専門は「漫画文化論」「ジェンダーと表象」など。2007 年まで筑摩書房で編集者として働くかたわら、コミック・セクシュアリティなどを中心に評論活動を行う。2008 年より明治大学へ。講談社漫画賞・手塚治虫文化賞・メディア芸術祭マンガ部門等の選考委員を歴任。最近ではとくに、マンガの国際比較や海外市場調査などを行っている。著書に『私の居場所はどこにあるの?』(朝日文庫)、『快楽電流』(河出書房新社)『少女まんが魂』(白泉社)、『愛情評論』(文藝春秋)など。近著に『きわきわ』(亜紀書房)がある。