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8生活

はじまりのはる はじまりのはる
小学生から OK
- 著者
- 端野洋子
- 出版社
- 講談社
- 発刊状況
- 未完
「福島産」。その言葉が背負うもの
福島在住の著者が描く、原発事故後の農家の物語
- ※発刊状況は 2020 年 10 月 1 日時点のものとなります。
- ※小学生から OK はあくまで委員会の判断による目安となります。
推薦コメント
被災後の福島を描くことには覚悟がいる。それはずっと福島在住の著者にとっても同じである。1巻目は酪農、2巻目はシイタケ農家。大事に大事に育ててきた牛を見捨て、死なせなければならない苦しみ。手間をかけた高級露地物のシイタケが、一日にして高濃度汚染廃棄物になり、密閉されたハウス栽培のシイタケも、一緒くたに「汚染」のレッテルを貼られることの理不尽さ……。原発事故後の福島の農業の現場を身体で理解して分別と覚悟をもって描くために、著者は暇があれば地元でのボランティア作業に参加するという(毎日新聞インタビュー)。同じ福島でも、著者が住む「高原の町」と、「海の町」は違う。現実は一面的ではなく、私たちが考えるよりずっと重層的で複雑だ。一筋縄ではいかない、そうした福島の現実を、風評被害への反応を含め、著者はため息がでるほどの丁寧な筆致で描き出す。この作品を読み込むことで、見えてくることがきっとある。
藤本 由香里(明治大学 国際日本学部教授)
藤本 由香里
Yukari Fujimoto
明治大学 国際日本学部教授
専門は「漫画文化論」「ジェンダーと表象」など。2007 年まで筑摩書房で編集者として働くかたわら、コミック・セクシュアリティなどを中心に評論活動を行う。2008 年より明治大学へ。講談社漫画賞・手塚治虫文化賞・メディア芸術祭マンガ部門等の選考委員を歴任。最近ではとくに、マンガの国際比較や海外市場調査などを行っている。著書に『私の居場所はどこにあるの?』(朝日文庫)、『快楽電流』(河出書房新社)『少女まんが魂』(白泉社)、『愛情評論』(文藝春秋)など。近著に『きわきわ』(亜紀書房)がある。