矜持をつらぬく美学
京の三十三間堂の「通し矢」に命をかけた男たちの物語
「武士道とは、理不尽さに耐え矜持をつらぬく美学」平田作品における武士道の生き方を一言で表せばこのようなものか。平田作品の多くは、武士であるがゆえに、望まぬ死を受け入れる(あるいは死ぬ事によって誇りを守ろうとする)男たちを主人公としている。現代人の合理的視点から見れば「無駄死に」ともいえる形で人生を終える。その切なさと悔しさ、そして重々しい美しさが圧倒的な説得力を持って迫ってくる。「弓道士魂」は、京の三十三間堂の通し矢にかける男たちの物語だ。各藩のプライドを背負って命がけで矢を射る男たち。国家の威信をかけて金メダルを目指す図式と似てはいるが、より重い。新記録を打ち立てなければ切腹して果てるのだ。本作の主人公である下級武士の星野勘左衛門は通し矢に関わる多くの人間の不運な死に憤り、ついに「もの言う武士」となる。現代にも通じる「人間としての在り方を問う」作品だ。
推薦コメント
「武士道とは、理不尽さに耐え矜持をつらぬく美学」平田作品における武士道の生き方を一言で表せばこのようなものか。平田作品の多くは、武士であるがゆえに、望まぬ死を受け入れる(あるいは死ぬ事によって誇りを守ろうとする)男たちを主人公としている。現代人の合理的視点から見れば「無駄死に」ともいえる形で人生を終える。その切なさと悔しさ、そして重々しい美しさが圧倒的な説得力を持って迫ってくる。「弓道士魂」は、京の三十三間堂の通し矢にかける男たちの物語だ。各藩のプライドを背負って命がけで矢を射る男たち。国家の威信をかけて金メダルを目指す図式と似てはいるが、より重い。新記録を打ち立てなければ切腹して果てるのだ。本作の主人公である下級武士の星野勘左衛門は通し矢に関わる多くの人間の不運な死に憤り、ついに「もの言う武士」となる。現代にも通じる「人間としての在り方を問う」作品だ。
里中 満智子(マンガ家 / マンガジャパン代表)