「福島産」。その言葉が背負うもの
福島在住の著者が描く、原発事故後の農家の物語
被災後の福島を描くことには覚悟がいる。それはずっと福島在住の著者にとっても同じである。1巻目は酪農、2巻目はシイタケ農家。大事に大事に育ててきた牛を見捨て、死なせなければならない苦しみ。手間をかけた高級露地物のシイタケが、一日にして高濃度汚染廃棄物になり、密閉されたハウス栽培のシイタケも、一緒くたに「汚染」のレッテルを貼られることの理不尽さ……。原発事故後の福島の農業の現場を身体で理解して分別と覚悟をもって描くために、著者は暇があれば地元でのボランティア作業に参加するという(毎日新聞インタビュー)。同じ福島でも、著者が住む「高原の町」と、「海の町」は違う。現実は一面的ではなく、私たちが考えるよりずっと重層的で複雑だ。一筋縄ではいかない、そうした福島の現実を、風評被害への反応を含め、著者はため息がでるほどの丁寧な筆致で描き出す。この作品を読み込むことで、見えてくることがきっとある。
推薦コメント
被災後の福島を描くことには覚悟がいる。それはずっと福島在住の著者にとっても同じである。1巻目は酪農、2巻目はシイタケ農家。大事に大事に育ててきた牛を見捨て、死なせなければならない苦しみ。手間をかけた高級露地物のシイタケが、一日にして高濃度汚染廃棄物になり、密閉されたハウス栽培のシイタケも、一緒くたに「汚染」のレッテルを貼られることの理不尽さ……。原発事故後の福島の農業の現場を身体で理解して分別と覚悟をもって描くために、著者は暇があれば地元でのボランティア作業に参加するという(毎日新聞インタビュー)。同じ福島でも、著者が住む「高原の町」と、「海の町」は違う。現実は一面的ではなく、私たちが考えるよりずっと重層的で複雑だ。一筋縄ではいかない、そうした福島の現実を、風評被害への反応を含め、著者はため息がでるほどの丁寧な筆致で描き出す。この作品を読み込むことで、見えてくることがきっとある。
藤本 由香里(明治大学 国際日本学部教授)