2018.11.29
2018年10月30日~11月1日、パシフィコ横浜にて開催された第20回図書館総合展。「これも学習マンガだ!」も、キハラ株式会社ブースにてPRを行いました。
今回は11月1日(木)、図書館などの公共空間のプロデュースやライブラリーマガジン「LRG」の発行を手がけるアカデミック・リソース・ガイド株式会社(以下ARG社)のブースにて開催されたトークイベント「マンガという体験、図書館という環境」のレポートをお届けします。
ゲストは表智之さん(北九州市漫画ミュージアム)、伊藤遊さん(京都国際マンガミュージアム)、新出さん(白河市立図書館)。ファシリテーターはARG社の李明喜さんです。表さん・伊藤さんはそれぞれ現地からオンラインでの参加という形で行われました。
マンガで学ぶ、マンガを学ぶ…様々な「マンガ×学び」の実践
李 明喜(以下、李):
おはようございます。ARG社ブース、本日1発目のイベントです。
このトークのタイトルは「マンガという体験、図書館という環境」。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ARG社が季刊で出しているLRGという図書館についての雑誌がありまして、こちらの最新24号で全く同タイトルの特集をしています。
こちらの刊行記念ということで開催させていただいています。よろしくお願いします。
それでは、本日のゲストをご紹介します。それぞれ改めての自己紹介と、今回LRG24号に寄稿いただいたり、読まれたりしての率直な感想などをお話しいただけますでしょうか。
まず、京都国際マンガミュージアムの伊藤遊さんです。
伊藤 遊(以下、伊藤):
みなさんおはようございます。伊藤といいます。
僕は京都国際マンガミュージアムというマンガ文化施設…このイベントでは広く「マンガミュージアム」と呼びたいと思いますが、そこで「研究員」という形で働いています。
京都国際マンガミュージアムという所は図書館・博物館的な機能を持っていて、資料をアーカイブしたり、アーカイブしたものに対する研究をしたりしています。僕はマンガ研究者であり、蔵書の配架を考えるような司書であり、マンガの展覧会やイベントを作る学芸員、イベンターであり、つまり、いろんなマンガに関する仕事を、マンガミュージアムという場を中心に行っている者です。
李:
LRGでは京都国際マンガミュージアムの取材にご対応いただき、エッセイの寄稿もいただき、また連載「司書名鑑」のインタビューにもご登場いただきました。
伊藤:
はい。「司書名鑑」では、僕がしゃべったことをほとんど割愛せずに載せていただいて。僕自身の出自から、ぶっちゃけ話みたいなことも含めて載ったので、周りからは「結構しゃべったね」みたいな反応もありましたが、他の執筆陣も豪華なメンバーですし、研究者周りではすごく反響のある特集になっています。
李:
ありがとうございます。インタビュー、面白くて削れるところがなかったんです(笑)。伊藤さんご自身のライフストーリーから今のお仕事に全部つながってきていて。なんとなく僕も読み直していて、二人で笑顔で話していた感じが多少は伝わったかな、良かったなと思っています。
では続きまして、北九州市漫画ミュージアムの表智之さん。表さんには今回、北九州市漫画ミュージアムの情報を提供いただきました。LRGの特集では下の世代の方たちに登場いただこうと、今回表さんに寄稿はお願いしていないのですが、それを読まれての感想を伺いたい思いもあり、今日はご登壇いただきました。
表 智之(以下、表):
はい、よろしくお願いします。ご紹介にあずかりました表でございます。
いま、福岡県の北九州市漫画ミュージアムという所に専門研究員として勤めていますけど、元々は伊藤さんと一緒に、京都国際マンガミュージアムで研究員として立ち上げに関わりました。
北九州は市の直営、京都は市と大学の共同事業という形で、それぞれ座組も全く違いますし、資本関係も全くないんですが、北九州は京都での経験をかなり下敷きにしている部分もあり、現場レベルでは非常に密な連携を保っています。
で、LRGの感想としては、総じて言うと、僕が想像していたよりマンガの導入に対して、図書館内でも積極的な動きも出てきていて、あと少しなのかなと、非常に希望の持てる特集だったと思います。
我々はあくまでミュージアムの人間で、共有できるところもできないところもあって、図書館に対しては側面支援に回ることが多いんですが、新さんの論考も含め、どこに力を集中させればブレイクスルーが起きるかを考えるうえで、すごく学ばせていただきました。
李:
ありがとうございます。では、今もお名前が出ました白河市立図書館の新出さん。
今回、論考「公共図書館とマンガ――ありふれた図書館資料として収集・供給するために」を寄稿いただきました。
こちらを書いてからの反響やご自身の感想みたいなところも含めて、ぜひお話しいただければと思います。
新 出(以下、新):
はい。白河市立図書館の新です。よろしくお願いします。
今回の原稿、当初の依頼の4倍の量を書いてしまって(笑)。ほとんどカットなしで載せていただきました。この特集では図書館のプロパーの関係者が私以外にあまりいなかったので、結果的に多めに書いて良かったなと思っています。
強調しているのは、いま白河市立図書館では2万冊強くらいのマンガを蔵書として持っていますが、マンガを特に積極的に集めているわけではないということですね。出版状況に鑑みればこれくらいのボリュームになってしかるべき資料群なので。そういう意味で、マンガを特別扱いしなくても、他の資料と同じようなオペレーションで回していけるのでは、ということを含めて、事例として書かせていただきました。
李:
ありがとうございます。実はこれまでにも、図書館系の雑誌でマンガの特集というのは数年に1度組まれてきていますが、公共図書館での実践例があまり見えてこなかった部分があり、現在白河で新さんが実践されてきていること、またマンガミュージアムという場での蓄積がされてきている中で、改めて「マンガと図書館」を考えてみたいということで、今回の特集をさせていただきました。
伊藤さん表さん、公共図書館におけるマンガの状況についてはどういうふうに思われます?
伊藤:
僕が強調しているのは、マンガ作品だけじゃなくて、マンガの「読み方」がわかる研究書みたいなものも置いてほしいということですね。
というのは…学校の授業で、例えば国語では小説や論評の読み方を教えますよね。美術の授業では美術作品の見方を勉強します。だから普通の義務教育を受けた人なら、小説や美術はある程度作品を楽しめる素養を身につけています。
一方、マンガの読み方を教える「マンガ科」っていう科目はないわけです。でも、本当はマンガにはマンガなりの読み方があって、それを学ぶことでマンガはマンガならではの、小説とか美術とは別の深みに人を連れていってくれるはずです。
そういうマンガの読み方についての研究、知見の蓄積に触れられる場に、せめて図書館や、僕らマンガミュージアムがなるべきじゃないかと思っていて。
李:
僕が伊藤さんにインタビューに伺った時に一番感動したとともに共感したのもやっぱり、「マンガにはマンガでしかたどり着けない地平がある」というところです。
マンガってどうしても、何か別のものに対する「入口」に使われることがあるんですよね。例えば難しい哲学書とか経済の本を、文章では読みにくいからマンガにしようとか。
もちろんそういう役割もあると思いますけど、やっぱりマンガにはマンガならではの体験があると思うんです。文学には文学ならではのものがもちろんあるでしょうし。
では表さん、同じように図書館におけるマンガということで、いかがでしょう?
表:
はい。今の伊藤さんのお話につなげて言うと、最近うち(北九州)では、地元の大学で、うちの5万冊の蔵書を使った研究…研究というにはまだ初歩的なんですけど、調べものをしてレポートを書くっていう授業をやっていまして。
で、読んだものから調べを延長させて、例えば魔女っ子もの、変身少女ものについて調べてみたいという学生がいるわけです。それで、ああ、それは『魔法使いサリー』から始まって、『キューティーハニー』はちょっと男の子向けで…とか、そういう歴史をひもといてあげると、すごく驚くし、喜ぶんです。
ある程度マンガに関心のある学生が来ているんだと思いますけど、それでもリアルタイムのもの、自分がいま自然に知っているものの上に系譜があるってことを知らない。それを教えてあげることで、関心がより高まっていくんですね。
この「あるテーマ、モチーフに基づく作品を、時間を超えて読む」っていうのは、それだけでもわかることがいっぱいあって、驚きも学びもある。いま大学の例を出しましたけど、中学や高校、あるいは小学校でもやってみていいと思います。
忙しい学校教育の現場では難しい話なのかもしれないけど、こういう、マンガを使った学習の事例が増えていったりすると、さっき伊藤さんがおっしゃった「マンガでしかわからないこと」を体験する事例として、すごくいい蓄積になると思うんです。
マンガを図書館に入れるための話としては、ある意味順序が逆かもしれないんですが、マンガを入れている、持っているところがそれを使って何をして、どんなことがわかったかっていう事例をどんどん増やしていくべきじゃないかと。
そんなことを思いながら取り組んでいます。
李:
ありがとうございます。表さんはそういった実践での経験からというところで、かなりライブラリーとミュージアムの重なる部分からのお話をされることが多いなと感じています。
新:
他のいわゆる博物館・美術館と比べると、マンガミュージアムはライブラリーに近い側面がかなりあると思います。絵画のようなアート作品と違って、マンガはそもそも複製芸術ですから、図書館も作品そのものを収蔵できる。それなりのコレクションをつくればマンガミュージアムのようなこともできなくもない。そういう意味で非常に隣接した関係だなと感じますね。
李:
公共図書館が満たせていない部分を結果的にマンガミュージアムが補っているような関係性があるのが面白いですね。その中で、公共図書館の側が意識的に何か動きを起こそうとした時、今回の新さんの論考は非常に参考になるものではないかと思います。
「マンガを読むのに適した空間」とは? 読書体験と図書館のあり方
李:
先ほど伊藤さんから、マンガの「読み方」研究についてのお話がありましたね。
LRGの特集ではマンガ研究者の三輪健太郎さんにも寄稿をお願いしています。これはまさに、「図書館とマンガ」を考えるにあたって、今マンガがどういうふうに「研究」されているかを図書館業界に伝えたい、という思いがありました。
伊藤:
三輪さんは、90年代以降マンガ研究の主流になった「マンガ表現論」――マンガがどういうルールでできていて、それを読者がどう読み取っているかを考える研究の、いま最前線にいる人です。そういう人の論考が図書館のための雑誌に載ったというのは、とても重要なことだと思います。
表:
マンガの専門的研究は、マンガそのものの中というより、マンガと僕ら読者の間に発生するコミュニケーションだったり、あるいはマンガ同士の関係性だったり、マンガの“外側”に出ることが多いんですよね。まさにマンガという“体験”をテーマにするような。
特に今回の三輪さんの論考では、「マンガを読む」という行為は近代的な「読書」とは違うものだとはっきり書いている。
これは、図書館の空間づくりの根本を揺さぶる、結構ラジカルな話だと思います。
李:
読書体験のあり方から、それに適した環境を考え直すということは、ARG社でも常に意識しています。そして実際、京都、北九州もそうですし、他にも立川まんがぱーくなど、いろんな環境が作られてきてもいますよね。
そのあたり、ミュージアムで実践されている立場としてはいかがですか?
伊藤:
京都の場合は、そもそも廃校をリノベーション…それも、元々3つくらいあった建物を無理やり1つの建物にするという、やや強引なリノベーションをしています。なので、意味のない階段や隙間、柱なんかがたくさんある、ちょっと迷路みたいな建物になってるんですね。
最初は動線をうまく作れないこと、来館者を思い通りに誘導できないことに悩んでいたんですが…そんな中で、既存のミュージアムや図書館での来館者の動きについて調査・研究をする機会があったんです。その結果わかったのは、あるコンセプトに従って作られた空間では、来館者の身体や所作もそのコンセプト通りに「作られて」しまうということ。スタッフもそれを逸脱する所作には注意をするわけですね。
一方、京都では座り込んだり、グラウンドで読んだりというような、いろんな所作が来館者によって“発明”されている。
それで、「図書館」「博物館」という従来の環境に、マンガって実は適さないんじゃないか。そういう環境に合わせてマンガを読むことを強制するのがそもそもナンセンスなんじゃないかという発想にたどり着きました。
「マンガに適した空間とは?」に対する答えはまだ出ていないと思うんですけど、少なくとも京都国際マンガミュージアムは、新しいマンガ図書館、マンガミュージアムみたいなものを考えるうえでの実験場にしていこうと。
だから、お客さんが何をしていても、とりあえず怒らない。「なるほど、そういうことするんだ」と観察・記録していくことを、自分たちの役目にしていこうと思っています。
李:
ありがとうございます。北九州のほうはいかがでしょう?
表:
お客さんの動きを制限しなくても大丈夫だというところは、うちも京都での成果を踏まえてそういうふうにやっています。
プラス、京都は三層構造の建物やグラウンドなど、来館者はあちこちに散らばって読むけれども、うちはあくまで商業施設の2フロアを使っての展開であることもあり、閲覧ゾーンを設けていて、来館者はそこに集まってマンガを読みます。
せっかく集まるんだからある種の交流機能を持たせようと思って、読んだ本の感想を残していくホワイトボードを置いています。
李:
今日は、実際に「閲覧ゾーン」の写真もご用意いただいています。
モニターに写していきますので、解説をお願いできますか。
表:
はい。まず、「特集コーナー」です。
これも京都での経験でわかったこととして、マンガがただ置いてあるだけでは、みんな自分があらかじめ知っている作品しか読まないんですね。そうではなく、ここでしか読めないマンガに出会ってほしいという意味で、特集コーナーをかなりしっかりやっています。
大体常時6つくらい、テーマを決めて回しています。
それから、ゾーニングについて。
これは京都と決定的に違うところですが、うちは市の直営なので、誰に何をどこまで読ませるかという、レーティング的なことにはかなり気を使っています。
やり方としては、書架の真ん中に青い線が見えると思うんですが、この線をだいたい150㎝くらいの高さにして、ここから下を「ファミリー」、上を「ユース&シニア」と呼んで、下にお子さんも読めるもの、上にある程度おとなが読むものを。さらに、もうちょっとセンシティブなものは収蔵庫に入れておいて、適宜出納する方法をとっています。
このやり方で、現在のところクレームみたいなものは出ていません。
李:
『ジョジョの奇妙な冒険』が写っているのが見えましたが、『ジョジョ』は線より上なんですね。
表:
元々は「週刊少年ジャンプ」掲載作品ですが、途中から青年誌の「ウルトラジャンプ」に変わっているという理由もあります。掲載誌で判断しているわけではなく、それを踏まえながら、司書がある程度個別に判断してはいますが。
あと、これは閲覧ゾーンからは少し外れるんですが、マンガ年表的な「漫画タイムトンネル」というコーナーも設けています。戦後から現在までの代表的な作品の1巻だけ並べてあって、続きは閲覧ゾーンに置いています。床面で、合わせて写真で戦後史の流れが見えるようにしています。
李:
なるほど、ありがとうございます。
さて、新さんのほうは、“空間”についてはいかがですか? 公共図書館におけるマンガ空間というものについて、意識されていることなどがあればお願いします。
新:
実務的なことで言うとまず、ソファとか、快適に過ごせる椅子が必要ですね。
図書館でよく知られていることですが、特に子どもは、ものすごくアクロバティックな体勢で本を読もうとするんですね。マンガではそれがより強くあるかなと思います。
で、最近は利用者を図書館に合わせさせるのではなく、図書館の側が利用者に合わせようという動きも出てきているので。そのあたりは公共図書館もどんどん取り入れていくべきところかなと。
それから、先ほどの三輪さんの論考の話に関連して、伊藤さんからもマンガの研究書が図書館に置かれるべきという話がありました。白河市立図書館でもマンガ研究書とか、マンガ家の業績をまとめた本も入れています。あまり利用は多くないですが、やはり置いておくことに意義があると思うので。
関連書籍という意味では、むしろマンガの描き方について書かれた本の利用が多いですね。
NDC的に言うと726.101がマンガ研究書、726.107がマンガの描き方なんですけど。
もっと言うと、館内でマンガを描いている人もいます。
伊藤:
へえー!
新:
日本のマンガの特徴として、やっぱり描き手の裾野が非常に広いということがある。
図書館もそういった、利用者が資料を使って再創造するような営為をどうサポートしていくかが論点になってきてもいますから、マンガの描き方のワークショップなども今後増えていくのかな、と思います。
マンガミュージアムと図書館が、手を取り合ってできること
李:
ありがとうございます。
では次に、伊藤さん表さん、この機会に図書館関係者である新さんに聞いてみたいことがあれば伺ってみたいと思います。伊藤さんいかがですか?
伊藤:
僕は、図書館の方と一緒にできないかなと思って提案したいことが2つあります。
まず1つは、マンガ書籍のアーカイブについて。
2000年代以降、僕の言葉を使えばマンガの「公化」、パブリック化がすごく進行している。それで今は、文化庁が相当の税金を使って、マンガ本やマンガ原画を保存するためのバックアップをしていくというプロジェクトをやってるんですね。
僕や表さんはそれに直接関わっているんですが、ご存知の通りマンガの本ってものすごくボリュームがあって、マンガ施設みんなで協力しても物理的にスペースが足りない感じなんです。
じゃあ、公共図書館もマンガを持ち始めているこのタイミングで、そこともネットワークを作って、みんなで集めるということができないかなと。
新:
はい。もちろんありうると思います。
そもそも、マンガに限らずあらゆる資料を分担して保存するというのは、本来図書館の責務のひとつです。日本の場合は自律的にではありますが、活字の本であれば、各都道府県で最後の1冊になる場合は保存しておくような動きをとっています。
ただ、マンガについては現時点では図書館での収集量が少なすぎる。しかも、結局メジャーなものから集めるので重複が多くなる。相互貸借が機能していないという問題もあります。
だから、例えばマンガを5,000冊以上持っている図書館、ミュージアムでコンソーシアムを組んで、その中ではどこに何があるかを検索もできて、相互貸借もする。まずはある程度意識的なところの間で組んでいくというのが、可能性としてはあるかなと。
伊藤:
ありがとうございます。
もう1点は、これはほとんど妄想みたいなことですが、図書館さんと協力して、「図書館に置くべきマンガ全集」みたいなものを解説つきで出版できないかなと。
過去にもマンガ全集っていろいろ出てますし、研究者の側でそれを作ったらいいとも思ってたんですけど、やはり図書館に置かれる前提で、図書館の意見や力を集めて出版するプロジェクトにつなげられないかと思って。
新:
企画としてはとても良いと思います。「全集」というオーソライズされた出版形態は図書館に入りやすいし、司書も非常にあてにしています。
ただ、収録されるのはどうしても作品の一部ずつという形になっていきますよね。そこで同時に必要になってくるのは、オーソライズされた作品リストを作っていくこと。
現役図書館員は、マンガの選書をできないというよりは、量が多すぎて手の付け方がわからないという戸惑いがあります。
「これも学習マンガだ!」もその一例ですが、そういう作品リストが増えていくと、やりやすくなると思います。
李:
ありがとうございます。表さんはいかがですか?
表:
うちでは複本の扱いにちょっと困りつつあって、図書館も含めて、いろんなところに融通できないかと考えています。
例えばですが、うちの複本を集めて、料理の楽しさがわかるマンガのセットとか、スポーツの楽しさがわかるマンガのセットといったものができたとき、その譲り先として公共図書館に呼びかけをしたら、ニーズはありますか?
新:
そういうセットですと、学校図書館にはまず需要があると思います。
公共図書館の場合は、まず作品リストをいただければ。都道府県内の図書館でそういうリストを回して、必要なところは手を挙げてくださいという動きは今までもやっていることなので。北九州からのリストであれば、引き合いがあると思います。
表:
わかりました。ありがとうございます。
李:
ありがとうございます。面白いですね。ずっとお話聞いていたいんですが、残り時間が迫っておりまして…締めに一言ずつ、短めのメッセージをいただければ。
伊藤:
宣伝になりますが、今日も少し出た“マンガの仕組み”自体を解説するマンガを『この世界の片隅に』のこうの史代さんが描いていまして、11月22日から京都国際マンガミュージアムでその展示(「ギガタウン・イン・テラタウン こうの史代の「漫画図譜」展」、~2019年4月2日)をします。
マンガの読まれ方みたいなことを図書館、ミュージアムに提案するヒントにもなるかと思いますので、ぜひ見に来ていただけたらなと思います。
表:
僕からは、うちの館に来ていただきたいというのももちろんですが、それ以外でもいろいろお声がけいただけたら嬉しいと思っています。
同じ「読んでもらう場」として、図書館業界の方たちの「こんなことができたらいいのに」に応えられる部分があるかもしれないし、応えたい思いもすごく強くありますので。
李:
京都国際マンガミュージアムも北九州市漫画ミュージアムも、非常に楽しい所ですので、みなさんぜひ。では最後に新さん、お願いします。
新:
はい。今日の話で、マンガミュージアムはライブラリーに非常に近い施設だということが改めてわかりました。自治体が運営しているところも多いわけですから、もっと中の人同士のつながりも含め、図書館と連携していけたらなと思いますね。そのきっかけに今日の会がなっていればいいなと思います。
李:
僕自身も、ここから新しい何かが生まれる、そういう話ができた気がしてゾクゾクしています。
本日はお忙しい中、長時間ありがとうございました!
*********
【プロフィール】
<ゲスト>
表 智之(おもて・ともゆき)
北九州市漫画ミュージアム専門研究員
1969年、大阪府生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程(後期)修了。博士(文学)。専攻は思想史・マンガ研究。京都精華大学にて「京都国際マンガミュージアム」の開館に携わり、研究員として学芸全般に関わった後、2011年より現職に就き、学芸業務の統括に従事している。
伊藤 遊(いとう・ゆう)
京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム 研究員
1974年愛知県生まれ。大阪大学文学研究科博士課程後期単位取得退学。京都国際マンガミュージアムの構想段階より研究スタッフとして関わり、オープン後は研究員として、マンガ資料のアーカイブや展覧会・イベントの企画・制作を担当。専門はマンガ研究・民俗学。マンガ研究のテーマは「マンガ展」および「学習マンガ」。民俗学のテーマは「考現学/路上観察」。水木しげる作品が人生の師。
新 出(あたらし・いずる)
白河市立図書館 主任司書
1978年生まれ。2005年より静岡県立中央図書館に勤務。2011年より福島県白河市立図書館に勤務。興味のおもむくまま、依頼のあるままに分野を問わず論考をかさねている。これまでに取り組んできた分野は、都道府県立図書館、選書、図書館システムなど。
<ファシリテーター>
李 明喜(リ・ミョンヒ)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
デザイナー/ディレクター。1966年生まれ。アカデミック・リソース・ガイドデザイナー。明治学院大学文学部芸術学科非常勤講師「デジタルアート論」。1998年、デザインチーム・mattを立ち上げ、商業施設、公共施設、イベントなどの企画・設計・デザイン業務を行う。主なプロジェクトとして、「カフェOFFICE」「BIT THINGS」「d-labo」「文化庁メディア芸術祭」など。2014年より、アカデミック・リソース・ガイド株式会社のデザイナーとして新しい文化施設づくりや地域のデザインにあたる。