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2021.03.30

「これも学習マンガだ!」を題材に、領域横断研究グループ「人と情報のエコシステム(HITE)」のメンバーと「新しい生活様式(=ニューノーマル)に活きる学び」を語る無料配信トークイベントを2020年12月に開催しました。

▼当日のイベントの様子(YouTube動画)

登壇者の一人である塚田有那さんは、小学生の頃からあらゆることはマンガで学んできたそう。世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長を務める塚田さんにとっての「学習マンガ」を5作品紹介していただきました。


塚田有那さん/一般社団法人Whole Universe 代表理事。編集者、キュレーター。世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長。http://boundbaw.com/

塚田有那さんの人類と社会を悩む5冊

●『ミステリと言う勿れ』(田村由美/小学館)

人がそれぞれ無意識のうちに抱いている思い込みや偏見を鮮やかに明らかにしていく作品。父親が子育てに関わることを「義務」と捉えるのか、または「権利」と捉えるのかによって考え方はまったく異なるなど、社会で起きているモヤっとすることに対して、誰かを攻撃したり批判するのではなく、「こういう説もある」という色々な筋道を見せてくれる。誰かに傷つけられないためとしての言葉や思想といった視点を得ることができる。読んで勇気をもらえる作品。
▼『ミステリと言う勿れ』これも学習マンガだ!紹介ページ

●『イムリ』(三宅乱丈/KADOKAWA)

テクノロジーが発達し、人民を支配によって統治する種族カーマ、魔術を用いて古代からの暮らしを維持する原住民族イムリ、階層社会の最下層を構成する奴隷民族イコルという3つの種族が登場する。テクノロジーを持つこと、力を持つとはどういうことなのか、そしていかに人が人を支配するのか、支配が前提にある上でどうしたら共生できるのかといった壮大な問いを前に、26巻かけて描ききった作品。簡単に解決ができない問題に直面しながらも、物語の最後には希望を残してくれた。文明とは何かを考えるきっかけに。
▼『イムリ』これも学習マンガだ!紹介ページ

●『大奥』(よしながふみ/白泉社)

作者のよしながふみ先生は、言葉にならないような小さな感情を丁寧に汲み取りながら心の機微を描く天才。2004年に連載が始まり、ドラマ化・映画化された際には「男女逆転の大奥」という触れ込みで女性向けハーレムの話だと捉えられがちだった『大奥』だが、社会を統治することの根幹や権力を描き、ジェンダーという枠を超えたときに浮かび上がる真の人間ドラマを描ききった超傑作。「#Metoo」など女性が抑圧されてきたことが問題視されるよってきた今こそおすすめ。
▼『大奥』これも学習マンガだ!紹介ページ

●『イティハーサ』(水樹和佳/早川書房)

「イティハーサ」という言葉は、サンスクリット語で「それは全てこのようなものであった」という歴史を表す意味。初期は少女マンガ誌「ぶ〜け」で連載された重厚なSFマンガで、目に見えぬ神々を信仰する民族と、目に見える神々を信仰する信徒、そして神々との争いを描いた、人間とは何か、神とは何かを問う作品。神は善なるものだけではないこと、人が神を信じるとはどういうことかなど、神や信仰について学んだ私にとってのバイブル。
▼『イティハーサ』これも学習マンガだ!紹介ページ

●『違国日記』(ヤマシタトモコ/祥伝社)

交通事故で親を亡くした高校生の姪っ子を引き取ったことから始まる、叔母と姪による二人暮らしの話。「ヤマシタトモコ文学、ここに極まれり」と言いたくなるほど、珠玉の言葉にあふれている。叔母は姪に対して簡単な共感を絶対に示さず、「あなたの根本的な寂しさをわたしはどうにもしてやれない」などと言う。しかし彼女はその上で、姪を子供扱いせず、ひとりの人間としての尊厳を大切にする。。人が人と共にいること、家族の関係だって多様でいいと、強く示してくれる作品。文字面だけの「多様性」を語る前にぜひ読んでほしい。
▼『違国日記』これも学習マンガだ!紹介ページ


▼「人類と社会を悩むマンガ」とは? HITE-Media×これも学習マンガだ! トークイベントレポート(HITE-Media)
https://hite-media.jp/journal/478/